「学校における生命倫理教育ネットワーク」第15回勉強会報告

Page last updated on 8 June, 2004. Comments to: Email <asianbioethics@yahoo.co.nz >.
ダリル メイサー(責任者、筑波大学 助教授)
〒305 つくば市 筑波大学 生物科学系
生命倫理に関する教育研究グループ
ファックス番号:0298-53-6614


生物学の授業と『出生前診断』をテーマに‐

<とき・ところ>
1999年6月5日午後3時〜6時>
東京都立日本橋高校にて

<参加者>
社会科
井上兼生先生(埼玉県立大宮中央高等学校)
田中裕己先生(名古屋大学教育学部付属高校)
山下亨先生(東京都立東村山高校)
三浦俊二先生(埼玉県立草加高校)
大谷いずみ先生(上越教育大学)
生物科
白石直樹先生(東京都立足立新田高校)
斎藤三男先生(東京都立井草高等学校)

メイサー、ダリル(筑波大学生物科学研究科)
浅田由紀子(ウイスコンシン大学)
加藤牧菜(筑波大学生物研究科学系)

勉強会の流れ
オリエンテーション、アイスブレーキング
(15:00〜15:30)
まず、第15回の勉強会のテーマを説明し、足立新田高校に発表していただくこと、その後にグループに分かれて話し合いをすること、話し合ったことや思いついたこと積極的に紙に書く方法を取るなど、大まかな流れをお知らせ致しました。
また、今回アメリカから一時帰国をしていた浅田由紀子さんが勉強会に参加しました。白石先生の報告の後、浅田さんから留学についての話があることも皆さんにお知らせ致しました。

白石直樹先生の報告
生物学の授業と「出生前診断」
(15:30〜16:25)
白石先生は生物学の授業と「出生前診断」についてのレポートを皆さんにおくばりし、そのレポートをもとに「ウニとカエルの、のう胚観察」実験の報告してくださいました。そして、参加者全員に「遺伝子診断(NHK)」「生命の物語(BS)」「誕生(万物創世記)」のビデオを見せてくださいました。
生物学の倫理的側面が問題視され、重要と指摘される時代の中、医学や農学の研究が生命間に与える影響は無視できないとおっしゃっておりました。特に、胎児がどのように成長しているのか、人の始まりは・・ということは客観的事実だけでなく生命感、人間感を含めているとのことです。その中で「出生前診断」技術は、いのちの管理、優生学といった目的のもとに開発されているように思われるとお考えでした。
そこで、「出生前診断」技術による「差別」を助長させないように、生物学の授業の中で「客観的事実」が価値観の多様性を否定しないように、どうしたらよいか考える必要があるとのことでした。
 「出生前診断」技術において、白石先生は、NHKの番組のビデオを教材として、また討論を活発化させる為にもちいているそうです。いのちのつながり、隠されている遺伝子、遺伝子はおなじでも、良い遺伝子悪い遺伝子はあるのか、といったテーマをもとにいくつかのビデオを生徒に紹介したそうです。そして、カエルの胚の観察実験を、どのように1つの受精卵から体が作られるか観察し、理解するという目的で授業で行ったそうです。実験は未受精卵からプルテウス幼生まで、10種類のプレパラートを観察しスケッチするものでした。
先生は、1つの受精卵から個体が形成されていく客観的な事実を実験において観察することをもとにして、生命感、人間感、そして価値観の多様性を生徒に考えさせようと実践されました。
その中で先生は、母体保護法と胎児条項、刑法胎児罪との関係(中絶可能時期の意味づけとして適当か)、生まれる前の選別と生まれた後の差別は別、をどうかんがえるか、自己決定権における差別をどう問えるか、など考えて行く中で、生物学の果たす役割は大きいとお考えでした。

各自コメント作成
(16:25〜16:35)
我々が用意したポストイットを参加者全員に配り、白石先生の報告をもとに参加されたみなさんの意見またはコメント、質問などを各自ポストイットに書いていただきました。

グループ討論
(16:50〜17:20)
2つのグループに分かれ、各自ポストイットに書かれた意見をもとに討論を行いました。各グループは討論しながら、我々が大学から持ってきた大きな模造紙に、各自の意見を書いたポストイットを意見が関連し合うように貼り付ける作業を行いました。それぞれの関連性を探り問題点を明らかにしていく、という形で話し合いを進めました。
各グループのメンバーは次の通りです。
Aグループ:田中裕己先生、白石直樹先生、大谷いずみ先生、山下亨先生、浅田由紀子
Bグループ:斎藤三男先生、井上兼生先生、三浦俊二
先生、加藤まきな、メイサー・ダリル

グループ同士の分かち合い
(17:20〜17:40)
 ポストイットを貼り付け、意見を書きこんだ模造紙を囲みながら、各グループで話し合ったことを全員に紹介しました。出来あがった模造紙は6頁から7頁のようになりました。

全体での分かち合い
(17:40〜17:50)
 グループで話し合ったことや各自グループの発表をもとに、全体で意見を述べ合い、今回の討論について振りかえりました。
第15回勉強会報告Group A
母の立場
■ がん細胞は常に生まれているが、抵抗力があればがん細胞に負けることはない。遺伝子を選別することが医療技術の進歩につながるのか?
■ 長男が3歳の時、墨田区にすんでいた。彼は公園で小枝が落ちていると怖がって泣叫んでいた。埼玉に引っ越した時は泣かなくなった。
* 母になるのとならないのとどちらを選びますか?
* 母の選択は権利ですか?
* どの人間にも病気につながる遺伝子があると聞く。出生前診断をしていくときりがなくなるのでは。
* 障害を持つ子がうまれてくる可能性が分かれば、うまれるまでにある程度の心の準備ができるのではないか。
生まれてから知ったのではショックが大きすぎると思う。
* 個人の幸福追求権利視点からすると、出生前診断には、「生命」を権利によって操作しようとする新しい人権が含まれるが、そこに、社会的エゴがプラスされる(優勢的)危険が発生する。
* 遺伝子の治療ができないか? 出生前診断
* 出生前診断技術の発展の彼岸には、「生命」を管理するという社会的なエゴの実現を意味する。
* ある存在を肯定したり、否定したりすることをあなたは許しますか?
* 出生前診断が全て正しいと信じますか?(医学が全能か?)
* 子供に異常児が生まれる確率が何%だったら、あなたは子供を作りますか?
* 出生前診断を行うのは、果たして個人のエゴなのだろうか?
* 生まれて来た自分の子供だけに愛を感じますか?
* 自分としては出生前診断に抵抗がある。しかし、同僚の1割以上が先天的障害児や、重病を持った乳児を抱えていることを考えると、混乱してしまう。判断に迷う。
* 障害があることは、不利か?
「精神的に豊かだ」という考えもあるが、現実的には障害がない人にはない苦痛があることは明らか。(周囲の人においても)
* 逆に、「生まれる」ということは、一体なんな のか。もしくは、何を実現することなのだろうか。付加価値とはなにか?
* 細胞の命=人の命? 細胞の命=/人の命?
* 「五体不満足」の乙武さんは、数百万部のベストセラーを書く能力を持っている。「五体満足」の自分は、その能力を持っているとは思えない。

■欠陥がある人を愛してはいけないのでしょうか?
* 遺伝的に欠陥があるといわれたら、あなたは結婚し
ませんか? 連続すること(複製)
* 人は「生殖」によって何を実現しようとするのか?
* 元来人間自体が家畜化されている訳だから、本来的には、優生学的に生かされている。
そこを更に、技術によって加速されることによってヒトは、何をヒトにめざそうとするのだろうか。
* 母と1受精卵、2初期胚、3胚、4胎児は、敵や相手 
ですか?
第15回勉強会報告Group B
* 「生命の質」への素朴な抵抗感。
* 生物学で扱えば扱う程、結果として抵抗感がなくなる。何のための学習か?

同様に、生命倫理額の問題提起

後追いの倫理に過ぎないのではないか。
考えさせてはみたものの、現状の追認にすぎない。 * 社会科は、どのようにいつ教えるのか?
* 環境、遺伝子バランスあるつたえ方。
* 生徒は自分の事として考えるのか?(SF、科学など)
* 男子生徒、女子生徒の反応の違いは?
(無責任のはじまり)

* 人は、いつヒトとして、扱われるのか?
(受精卵、コンパッション、脳の発生、心臓・・)
* いのちを「生かす技術」(臓器移植の2面性)
VS「殺す技術」(出生前診断)
* 異常を持つ胎児を理由に、堕胎は許されるのか?
* 優性学(生命の質の管理社会)の是非、優性学の危険性。出生前診断
* 医療経済の問題。<消毒>=ナチ <福祉>削減、障害者
* 障害を持つこと、病いを持つことの積極的側面
→共生社会、多様性 * 福祉のために生命の質を正当化できるか?するか?
* 1920から1930年代の米英
* 社会とヒトはどのようなフィクションを選ぶか?

* 現実とのギャップ。イメージ先行で進んでいる。
* 少数の当事者ではなく、全員に共通のものをどう伝えるか。
* 多様性をどう保証できるか?
* 「不幸な子ども」のレッテルをどうはがせるか?
* 個性を無視→「ダウン症」でひとくくり。
* 環境汚染ム遺伝子技術や出生前診断で人間の方を悪化した環境にあわせるのは本末転倒?
* ダブルスタンダードで出生前の選別と出生後の選別を区別できるか?
* 遺伝子疾患は本来個性ム本人、周囲が苦痛と感じた場合を疾患とみなす。(東大医科学研 浅野付属病院長)
* 「生身」の関係と「切り身」の関係
食物と生物とのつながりが見えない社会システムの問題。
■フェミニズム(女性の自己決定権)との関連

浅田さんによる報告
(17:50〜18:20)

浅田由紀子さんはアメリカから一時帰国をしていたため、今回の勉強会に参加しました。そこで、浅田さんからアメリカでの留学生活やウイスコンシン大学での研究内容についての報告がありました。浅田さんは現在ウイスコンシン大学で…についての博士論文を作成中のことです。
To Bioethics Education Network (Japanese)
To Bioethics Education Textbook Project
To Eubios Ethics Institute