「学校における生命倫理教育ネットワーク」第19回勉強会報告

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ダリル メイサー(責任者、筑波大学 助教授)
〒305 つくば市 筑波大学 生物科学系
生命倫理に関する教育研究グループ
ファックス番号:0298-53-6614


<とき・ところ>
2000年5月27日午後3時〜6時
麹町学園高等学校にて

心と体のつながり 倫理と保健体育の合科的試み

報告者 田中裕巳(名古屋大学教育学部付属高等学校・倫理)
        (名古屋大学教育学部付属高等学校・保健体育)

発表概要
「生命と環境」をテーマに総合的学習(総合人間科)に取り組んできた生徒たちのうち、指導者2人は、特に、脳死と臓器移植、老人介護、 病気、薬と麻薬、環境問題などを扱う生徒の自主研究を指導してきた。年度のまとめの段階にあたって、生徒たちの自主研究を教科の学習内容と結び付けることを目的として合科的な授業を試みた。
 この授業では、ホスピスを調べた生徒(2人)の自主研究を発展させて、「心と体のつながり」という観点から、病気や薬などの研究も、人間を部分や部位ではなく、「生きている人間」としてトータルに捉える視点の大切さを理解させることを目指した。

<参加者>
社会科
井上兼生先生(埼玉県立大宮中央高校)
石塚健大先生(私立芝学園高等学校)
大谷いずみ先生(上越教育大学)
小泉博明先生(東京都麹町学園女子高校)
田中裕己先生(名古屋大学教育学部付属高校)
山下亨先生(東京都立東村山高校)
三浦俊二先生(埼玉県立草加高校)

生物科
石黒隆文先生(埼玉県立岩槻北陵高校)
白石直樹先生(東京都立足立新田高校)
橘 都先生(東京都立羽田高等学校)

保健体育科
中村明彦先生(名古屋大学教育学部付属高校)

メイサー、ダリル(筑波大学生物科学研究科)
近岡三喜子(筑波大学第2学群生物学類)

勉強会の流れ

オリエンテーション、アイスブレーキング
(15:00〜15:25)

 まず、第19回の勉強会のテーマを説明し、名古屋大学教育学部付属高校の田中祐己先生と中村明彦先生に発表していただくことと、その後グループに分かれて話し合いをすることなど大まかな流れをお知らせいたしました。また、今回から近岡がこの生命倫理教育ネットワークの事務的仕事を引き受けることを簡単にお知らせし、簡単な自己紹介をさせていただきました。また、今回はじめて参加してくださった中村先生や、久しぶりに参加してくださった先生方もいらした為、簡単な自己紹介を参加者全員が行いました。

中村明彦先生、田中祐己先生による実践報告
心と体のつながりを考えよう
−倫理と保健体育の合科の試み−
(15:20〜16:00)

●「総合人間科」と「生命と環境」●
中村先生と田中先生が教えていらっしゃる名古屋大学教育学部付属高校では、平成7年より3年間にわたり、自分の人生を自覚的に選択していく力を育てる教育過程の開発として「総合人間科」を設置し、文部省の研究開発学校として取り組んでこられました。「総合人間科」の授業は、学校が休業日である第2・4土曜日を除いた土曜日の3・4限目に全校一斉に展開し、教科の枠を超え、全員が取り組む総合学習の実践を行っているそうです。
授業は学年テーマに基づき、学年担任団を中心とした学年プロジェクトによって実践にあたるそうです。高校1年生が「生命と環境」、2年生が「平和と国際理解」、3年生が「生き方を探る」というテーマに基づき実践される中で、今回先生方が取り上げた高校1年生の学年テーマは「生命と環境」でした。学年の目標としては、「生命と環境」のテーマをもとに、生徒にフィールドワークを中心とした個人研究を展開させ、人との出会いを通して人とのつながりを実感させるとともに、地球・社会とのつながりの意識を形成させながら自分の「あり方・生き方」を考えさせるものだそうです。具体的には学校以外の人々に「生き方」インタビューなどを行い、自分達の考え方を確立させていったそうです。

●倫理と保健体育の合科公開授業●
先生方が教えていらっしゃる名古屋大学教育学部付属高等学校で、総合学習の発展的展開として今年の2月22日に、公開授業が開かれたそうです。
そこで先生方は、総合人間科の学年テーマ「生命と環境」での生徒の学びを教科にどう発展させていくか、複数教科のクロスから公開授業を試みたとのことでした。  今回の高校1年の公開授業では機械的に担任と副担任の組み合わせで合科的指導を行うことになったそうです。中村先生と田中先生がそれぞれ教えていらっしゃる保健体育と倫理の場合は、「心とからだのつながり」=心身論という結節点があるためにスムーズに指導内容を決められることが出来たそうです。
生徒さん達が取り上げたいくつかテーマの中から、「ホスピス」を全面的に取り上げることによって、脳死、臓器移植、老人介護、少年犯罪などの他のテーマを「心とからだのつながり」=心身論という点からの位置付けが可能となったそうです。
実際の公開授業では1年間各個人で取り組んできたテーマが互いにどこかで通じ合っているのではないかという導入から始まり、実際に各々の生徒のアンケート結果によると「薬」「ホスピス」がそれぞれの研究に大きな影響を与えたとのことでした。そこで、中村先生(保健体育)は、「ホスピス」について、ケア精神を確認し、4つの痛み(身体的、精神的、社会的、宗教的)を医師、看護婦、ソーシャルワーカー等でコントロールする場所であることを説明されたそうです。また、田中(倫理)先生は、「健康」をテーマとして掲げ、人間の死や病気について倫理と保健体育の教科書の扱いの違いに触れ、差があることを確認されたそうです。
生徒の中で偏ったばらばらの知識が、まとまった主体的な知識として合科授業の意義を確認されたそうです。
まとめとして、教師自身が教科の粋を超えて、子供を全体としてとらえる機会が総合学習にあるとおっしゃっておりました。そしてそれは、子どもの人間形成にもつながるとのことです。そして、合科授業を通してさまざまな専門の教師のアドバイスが総合学習の可能性を切り開くと述べていらっしゃいました。

全体での討論1
(16:00〜16:35)
中村先生と田中先生の実践報告に対し、全体で意見や質問などを投げかけ、それをもとに話し合いをしました。また全体での話し合いは途中休憩をはさみ、2回に分けて行われました。
「総合学習科」の評価はどのように行っているかの質問に対しては、学年末にABCの3段階のでつけ、おもにコメントの評価になるとお答えになりました。
また、総合学習を行うことで受験勉強に差し障りがないかという質問に対しては、総合学習を通じて生徒達は進路に対して明確なビジョンを持つようになり、大学を偏差値ではなく自分のやりたい学問が出来る大学を選ぶようになったとお答えになりました。論文を書く力や、自分の意見を述べられる力がついたそうです。
先生方の反応についてはどうか、という質問に対しては、現在の学校改革、意識改革、子供観、教育観を考えると教師は自分の教科だけを教えていれば良いではすまされないとおっしゃられ、学校ないでも拒否反応を起こす先生はほとんどいないと述べられました。

休憩
(16:35〜16:45)

全体での討論2
(16:45〜17:45)

休憩をはさみ引き続き話し合いが行われました。後半の話し合いでは、総合学習から教師の授業での連携性、さらには倫理教育について話が発展してゆき、活発な議論がかわされました。同じ学習内容でも各教科で教える時期にズレが生じ、まとまった形で生徒に教えることが出来ないなどの問題点もだされました。また、倫理は全ての基礎である為、合科的な授業を行う場合は各教科のコーディネーター役として倫理の先生は適しているのではないかという意見も出されました。
田中先生は総合学習の半分は道徳教育でもあるとおしゃいました。総合学習を通じて、生徒さんは電話のかけ方、お礼状の書き方を学んだそうです。そして、自分で歩きの自分の目で見て覚えることは学びの原点であると述べられました。

事務的連絡
(17:45〜18:00)
 
 次回の勉強会についてとニュージーランドの旅行研修(8月1日〜)についての連絡をさせていただきました。


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