「学校における生命倫理教育ネットワーク」第33回勉強会報告

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ダリル メイサー(責任者、筑波大学 助教授)
〒305 つくば市 筑波大学 生物科学系
生命倫理に関する教育研究グループ
ファックス番号:0298-53-6614


日時:2003年9月6日 午後3時〜6時
場所:私立芝学園
内容:「生命倫理教育のための教材開発プロジェクト」をテーマに

<参加者>
石塚健大 私立芝学園
小泉博明 麹町学園
斎藤三男 実践生物教育研究会
白石直樹 墨田川高校
田中裕己 大同工業大学教育課程
前川 史 筑波大学
メイサー・ダリル 筑波大学
山下亨 東村山高等学校

勉強会の流れ
今回の勉強会では前回に引き続き、生命倫理の教材開発プロジェクトの進行具合と、各国での状況に付いての報告、更なる参加者の募集を行なう予定で開催されました。井上先生、小野先生の都合が悪く参加できないというメールがあった旨をお伝えしました。
 まず、前川から、プロジェクト全体の進行具合と各国での状況の報告を行ないました。以下に、プロジェクトに関する発表の抜粋と、この時点でのプロジェクトの進行状況を記載します。
 「生命倫理教育のための教材開発プロジェクト」は、異なる国々で用いることのできる生命倫理の教材開発を目的としています。実際の授業で、生命倫理問題について教えられる福徳本の作成と、ウェブ上での情報公開を最終産物とします。参加協力を申し出てくれた国々は、オーストラリア、中国、インド、日本、ニュージーランド、フィリピン、韓国、台湾です。
 教科書のサンプルに含まれるトピックは、以下のとおりです。
1. 生命倫理への導入
2. 選択と多様性と生命倫理
3. 動物の権利
4. 脳死
5. 臓器移植
6. 心臓移植
7. 自家用車の使用
8. エコツーリズム
9. 生活習慣と生殖活動
10. 生殖補助技術
11. 遺伝子組み換え食品と遺伝子工学
12. 末期がん患者への告知
13. 安楽死
14. ガン遺伝子罹患性テスト
15. 持続可能な開発
16. エイズ検査とケーススタディ
17. 異種移植
18. SARS

 このプロジェクトは様々な国での試行が予定されているため、同じような次期に同じトピックについて異国間での先生・生徒による対話が可能ではないかと思われます。また、生徒同士が意見を交換し、対話できる場として、学生用のメーリングリストを立ち上げました。基本的に教師は関与せず、公用語は英語で意見をやり取りするという形で、次のメールアドレスを公表しました。Bioethics_for_students@yahoogroups.com
 次に、参加各国での進行状況を発表しました。オーストラリアとニュージーランドの9月の時点での状況は、代表者(オーストラリア:ポラード先生、ニュージーランド:コナー先生)は両者とも教科書の執筆者であり、実践を検討中です。
 中国では、北京師範大学附属高等学校と、平北男子高校で授業を開催中、10月にはメイサー先生が現地を訪問する予定になっています。
 台湾では、台中にある北京医科大学で授業を実践中で、代表としてベリル・リー先生、ディナ・シン先生が決定しています。高校での実践も検討中です。
 トルコとインドでは、代表者が決定しています。トルコ代表はシャヒン・アクソイ先生、インド代表はジャヤポール・アザリア先生です。11月にはメイサー先生がインドのチェンナイを訪問し、協力校の先生や校長と面談する予定になっています。
 次に、授業での実践が最も進んでいる、フィリピンからの報告を行ないました。授業を実践中の学校は、アテネオ・デ・マニラ高等学校で、この学校はカトリック系の男子校で、政財界のご子息が多く通う、いわゆるエリート校です。
 教科書に対するフィリピンでの反応としては、以下のような点が挙げられました。
1. 生命倫理がある特定の立場を示すべきか否か
2. 安楽死などカトリック校では扱いづらい章がある
3. 協力校が教師個人に求めるものが発生するのではないか
4. 技術的、方法論的問題(例:コンピューターやインターネット接続の不足、ファックスやEメールなどの活用の限界)
5. フィリピンの勤務実態と期待される仕事量との関係
6. 理想的な評価環境と実際の授業とのギャップ

さらに、日本での授業実践の模様も報告されました。日本では、筑波大学において9月2日から、教科書サンプルを用いての授業が実践されています。これは、メイサー先生が受け持つ授業で、前川、ナンがオブザーバーとして全ての授業参観と評価報告を行いました。
日本の高校とは主に3校と実践の交渉中です。那覇国際高校のマスターティーチャープログラムで、生命倫理のトピックを扱っているということから、参考資料として教科書のサンプルを送付しました。10月から11月にかけて、授業参観ができればと予定されています。また、関東近辺のスーパーイングリッシュランゲージハイスクールにも交渉を行なっているところです。
実際にこの教科書を副読本として使用する場合、どの章を、どのように使用するかは各先生方にお任せします。試用期間中は授業に専念してもらうため、可能な限り授業参観という形でオブザーバーを派遣する予定です。
参加してくださる学校・先生方には、それぞれの参加国の代表に、実践の模様を報告してもらうことになります。具体的には、授業の内容や授業で配られた資料、生徒からの提出物(もしあれば)教員のコメントや反省などが含まれます。
授業の評価レポートは、主に授業の様子や生徒の反応、教材の問題点や改善点を探る目的であり、教師や授業自体の評価ではありません。また、オブザーバーが全ての授業を参観できるとは限らないので、その際の記録の意味もあります。この評価レポートは、チェックリスト形式である程度の枠組みの中で判断してもらう項目と、授業メモ形式で授業の流れやアクティビティーの記録をとる項目、そして発言表形式で授業中の生徒と教師のやり取りの記録という3つの項目からなっています。チェックリストには1.生徒の観点、2.教師の観点、3.教材の観点、の三項目が含まれます。
発表に引き続き、先生方からコメントをいただきました。第一に述べられたのが、プロジェクト全体としての壁と、アプローチの仕方に対するコメントでした。特に都立の先生には、昨今政府から定期的な「評価」が義務付けられているため、「評価」という言葉に敏感になっている先生方が多いのではないかと言う指摘がありました。最初に手に取る案内文に、評価はあくまでも教材の評価であって、授業や授業者の評価ではないことを強調することで誤解が解けるのではないかと言う指摘が挙がりました。同様に、教材のモニターであるという点を強調する必要性もあるのではないかという意見が挙がりました。
 教科書のサンプルに加えて、指導案のサンプルもつけてはどうか、という提案が挙がりました。このページはこのように教えてください、という提案を提示することで、現場の先生方も扱いやすくなるのではないか、という内容でした。また、レイアウトや分量に関しても、抵抗を減らす方策を採るべきではないか、さらには、英語の教科書を参考にし、ワークシート的な要素を盛り込むと、より実践的な内容になるのではないかという指摘がありました。英語の教材としての問題点も多くあるが、本来は生命倫理の教材として機能するべきなので、読むことよりも考えさせることの方が大事なのではないか、また、それを実際に書き出すようなアクティビティーが盛り込まれるべきではないか、という提案もありました。
 この教材は、英語の授業で使用されることを前提としていますが、医学や薬学系の予備校で、小論文対策として使われる可能性もあるのではないか、と言う意見が挙がりました。むしろ、学校教育で取り上げられることを期待するよりも、現実的かもしれません。更には、看護学校などへの売り込みも必要なのではないか、と言う意見が挙がりました。ただ、授業を行った際の感想がどれくらいフィードバックとして帰ってくるかについては、全体的に疑問が残ると言う声が多く聞かれました。
 更に言えば、英語でこの教材を扱える高校となると、それなりの学力レベルのある高校に限られるため、ごく普通の高校でのサンプルが得られないのではないか、という懸念があります。英語や社会科といった授業に限定せず、受験指導に絡めて紹介する、小論文対策として紹介するなど、PR方法に工夫が必要です。また、専門用語に訳をつけたり、用語集を付け、解説やそれぞれの場面での使い方なども充実させることによって、教材としてより魅力のあるものに仕上げていく必要があるのではないでしょうか。
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