学校における生命倫理教育ネットワークニュースレター
Vol.2(1) March 1998


編集:岡武志
発行:ダリル メイサー(責任者、筑波大学 助教授)
生命倫理に関する教育研究グループ
〒305 茨城県つくば市 筑波大学生物科学
FAX:0298-53-6614 / TEL:0298-53-4662
Email < asianbioethics@yahoo.co.nz >.
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目次
編集室から 1
学校における生命倫理教育ネットワーク第8回勉強会報告 -「総合的学習」をテーマに- 2
第9回勉強会報告ー「現代社会の課題を考える生物の授業実践」をテーマに 4
メンバーがネットワークに期待しているもの (浅田由紀子)18
生命倫理教育ネットワークの今後について(メイサー、ダリル)   18
新しい学生から20
ネットワーク活動報告書の出版について 22
イベント情報ーつくば夏合宿のお知らせ 22
教材発掘 23
第10回勉強会のお知らせ 23
第11回勉強会のお知らせ 23
学校における生命倫理教育ネットワークとは

教育における生命倫理の役割、生命倫理における教育の役割を探るために、1996年12月に発足したネットワークです。隔月の勉強会、ニュースレターを通じて、ネットワークは、生命倫理教育に興味を持つ人々をつなぐ場としての機能をはたします。特に高校での生命倫理教育に注目していますが、生命倫理教育に関心のある方ならば、どなたでも参加できます。


編集室から 1

日毎に春の薫りが増す今日この頃、ネットワークの皆さまにはいかがお過ごしでしょうか。第3号からずいぶんと時間がたってしまいましたが、ここに第4号をお届けします。

 今回は、昨年12月に開いた第8回勉強会の報告、つい先日開いた第9回勉強会の報告を掲載しています。また、第9回勉強会でも少しお知らせしましたが、メイサーと私から、ネットワークの今後について提案を書かせていただきました。さらに、名古屋大学教育学部附属高校、田中裕巳先生が進めてくださっている、ネットワークの活動報告書の出版の件についても田中先生から報告をいただきました。盛りだくさんの内容ですので、じっくりと読んでいただければ幸いです。

 さて、私事で恐縮ですが、私は今春、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を卒業し、今秋から海外の大学院博士課程に進学することになりました。したがって、ネットワークの事務的な仕事は、生命倫理研究室に所属する大学院生が引き継ぐことになりました。幸い、現大学院1年生の多くは、生命倫理教育に興味を持っており、何人かは大学院卒業後、教員になることを目指しています。今後、ネットワークにかかわっていく学生の自己紹介も掲載しておりますので、目を通していただければ幸いです。

 これまで、およそ5年間のあいだ、生命倫理教育に関する研究を進めてきましたが、ネットワーク設
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学校における生命倫理教育ネットワーク第8回勉強会報告 -「総合的学習」をテーマに-
とき・ところ
1997年12月6日午後3時〜6時
東京都立日本橋高校にて

<参加者>
社会科
小泉博明先生(東京都麹町学園女子高校)
田中裕巳先生(名古屋大学教育学部附属高校)
三森和哉先生(東京都立久留米高校)
山下亨先生(東京都立日本橋高校)

生物科
斎藤三男先生(東京都立井草高校)
捨田利譲先生(石川県立小松高校)
白石直樹先生(東京都立足立新田高校)
細田真奈美先生(埼玉県立浦和第一女子高校)

岡上悦子さん
斎藤さん
庄司進一先生(筑波大学臨床医学系)

浦田奈緒(筑波大学第2学群生物学類)
浅田由紀子(筑波大学環境科学研究科)


勉強会の流れ

オリエンテーション、アイスブレーキング
(15:05〜15:25)

 まず、第8回勉強会のテーマを説明し、名古屋大学教育学部附属高校の田中裕巳先生に発表をしていただくこと、その後グループに分かれて話し合いをすること、話し合ったことや思いついたことは積極的に紙に書く方法を取ることなど、大まかな流れをお知らせしました。そして、コメントシート(報告書に載せてみたい提案などを書く欄と、報告書には載せないけれども勉強会の間に気づいたこと、気になったことなどを書く欄からなるA4サイズの紙)を一人一枚ずつ配布しました。コメントシートは勉強会終了後、回収しました。

 また、12月にメイサーの家庭に不幸があり、メイサーは出席できないことを説明した後、全員で、ひとりずつ名前と所属だけを述べる自己紹介をしました。

 その後、参加者全員で、2人1組となり、自己紹介をしました。この自己紹介では、一方が自己紹介をし、一方は聞き、時間を区切って行いました。もっとも、もうすでに初対面ではない場合が多かったため、その場合は、お互いに近況報告をしあいました。続いて、2組ずつの4人のグループを作り、パートナーを他の人たちに紹介する他己紹介をしました。このときできた4人のグループを、この勉強会で話し合いをするグループとしました。

田中先生の実践報告

生命倫理教育と総合学習

(15:20〜16:20)

 田中先生は、これまでおよそ10年にわたり、総合学習を進めてこられました。初めは、学校内のグループとして、そして後に学校全体として総合学習に取り組むようになられたそうです。総合的学習は文部省も注目しているテーマであり、1996年7月に出された全国中央教育審議会第一次答申、1997年6月の第二次答申のどちらにおいても、総合的学習は生きる力を育むものとして取り上げられました。田中先生が教えていらっしゃる名古屋大学教育学部附属高校は、文部省研究開発指定校として注目されています。

 1986年度から1996年度においては、高校3年生の文系選択科目として「生命について」総合的学習を行ったそうです。学習課題としての多義性と発展性に可能性を見る一方、教科の専門性を越えることの難しさやその意味を考えた時期だったそうです。学習方法という視点からは、様々な意見を持つ教師がチーム・テイーチングを行う意味や、学校以外の知を利用しネットワークを構築していくおもしろさを感じたそうです。総合学習をはじめた当初は、教師が全面に出すぎてしまい、生徒たちの自主研究に発展するためには、生徒たちの準備はもちろん、教師側の準備もかなり必要だったそうです。

 その後、文部省の研究開発指定校として、中学・高校における新教科「総合人間科」に、中・高一貫の学校全体として取り組むようになられたそうです。「総合人間科」の学習課題としては、生命、環境、平和、人権、性、国際理解、核など現代的、人類的課題を設定するようにしているそうです。学年テーマとしては、

中1・高3では「生き方」、中2・高1では「生命と環境」、中3・高2では「平和を学ぶ」と設定しているそうです。また学び方としても、高校1年では個人研究を、2年ではグループ研究を、3年では再び個人研究をと、生徒がバランスよく成長していけるよう配慮しているそうです。また、田中先生は「総合人間科」の3つの「脱」として、「脱教科」「脱教室」「脱偏差値」を紹介してくださいました。そして、「総合人間科」のめざす能力観・評価観として、知的関心の形成と問題解決能力、体験・コミュニケーション能力、創造的表現能力、総合的思考力と実践能力の4つを挙げられました。この評価のためには、生徒自身、生徒同士、教師、学校外の4つの評価を用いているそうです。

 最後に、田中先生は、「総合人間科」の実践から見えてきたものとして、学校づくりという観点から、生徒が学んだこと、教師が学んだことを紹介してくださいました。生徒たちは、総合的学習を通して、学ぶ目的と意欲を養い、この姿勢は進路意識に影響を与えるものだったそうです。そして、教師にとっては、「総合人間科」は教師の在り方を問う存在であり、多くの教師の教科の専門家意識が揺さぶられたそうです。現在では、高校での「総合人間科」において、教師は指導教官ではなくオブザーバーの役割を果たすものと考えられているそうです。

 1997年11月に、名古屋大学教育学部附属中・高校の「総合人間科」の取り組みは、一冊の本となって出版されました(詳しくは「教材発掘」のコーナーをご覧ください)。ご関心をお持ちの方は、田中先生に直接お問い合わせください。

休憩(16:20〜16:30)

グループに分かれての話し合い

(16:30〜16:50)

 アイスブレーキングのときにできた4人1組のグループに分かれ、話し合いをしました。話し合いのテーマとしては、「総合的学習のメリット・デメリットを挙げ、デメリットをどう克服できるかを考えることにより、教科内学習、総合的学習それぞれの意義を考える」と設定しました。まず、ひとりひとりが、この点について田中先生の発表を踏まえながら、ポストイットに総合的学習のメリット・デメリットを挙げ、デメリットをどう克服できるかを考えることにより、教科内学習、総合的学習それぞれの意義を考を書き込みました。そして、1グループに1枚ずつ用意された模造紙に、ポストイットを張り付けながら、それぞれの関連性を探り問題点を明らかにしていく、という形で話し合いを進めました。気づいたこと、話し合ったことは、随時、模造紙にマジックで書き込むようにしました。

全体でのわかちあい(16:50〜17:20)

 ポストイットを張り付け、意見を書き込んだ模造紙を囲みながら、各グループで話し合ったことを全員に紹介しました。出来上がった模造紙は、8頁〜11頁のようになりました。

ふりかえり(17:20〜17:45)

 グループで話し合ったこと、全体で話し合ったことをふりかえりながら、ひとりひとり、「今日の勉強会で気づいたこと、学んだことは」「感想、意見など」の2点からなるふりかえりシートを記入しました。

まとめ、事務的な連絡(17:45〜18:00)

 次回勉強会について、1998年3月以降のネットワークのあり方について、私の進路にも少し触れながらお話しさせていただきました。


参加者からのコメント

(「コメントシート」「ふりかえりシート」から)

■共通した方向性が見えてきたような気がします。各教科の中で考えてもらう単元(?)を示すことで、生命倫理教育という全体の樹型が現れてくるのではないかと思いました。多様性をどう保障しながら統一性を求めていくのか、生命倫理教育は難しいバランスを取らなくてはならないと思いました。
■生と死、親子、差別などについて各教科からこれだけは理解させたいというようのものを示してもらえたらと思います。
■「総合的学習」2003年〜
この学習の理念、目標どおりに実施されれば素晴らしいと思う。ただし、どうも大学入試との関係で、だんだんと骨抜きになっていくような気がする。最初は「現代社会」が登場したときのように、何でもありの教師のパフォーマンス的な授業が展開されるかもしれない。生徒自らが興味、関心を持つ主体的学習がなされることを期待する。
■家庭科、養護、保健などの先生の参加も是非欲しい。
■生命倫理、環境倫理に関わる教材の各教科からの洗い出しが必要。
■海外の生命倫理教育の実践についての学習をしたい。
■最終的には、教員が柔軟な感性を保てるかという点が、生命倫理教育の総合的学習の成果を決めるということ [に気づいた]。
■環境倫理、臓器移植などを生徒の/各班のテーマとして選ぶことも良いが、これらのテーマを一つクラスで決め、多面的な角度から研究させるという方法も良いのでは。その方が、テーマの拡散という点でメリットを軽減し、体系性を保つことに役立てるのでは。
例)臓器移植
文学的視点、法的視点、科学的視点、経済的視点・・
■1)いかなる「力」を育てようとするのか(だ円の学力観」だと思う:「生命」について多角的、または深く学んだ。「学ぶ」ということを「学んだ」ー調べる、探す、まとめる、表現する)。
2)そのためにいい方法(授業〜評価)はなにか。
3)ともかく現場(どんな先生の集団、どんな生徒の集団か)の特質も大切。
4)ハヤリものには要注意。
■すっきりしました。ようするに、他人の子(そして一人の人間)を一日何時間かあずかって、どんな「その子」にとってよいことがあるか。これが学校、教師そして教科・授業のたえず問い直されるべき原点ですね。
■総合学科ということばを最近よく聞くし、取り入れる学校も増えていると知っていたが、実際どのように取り組んでいるのか知らなかったので勉強になった。現任校は、教科ごとで準備室が分かれており、職員室もないので、教科間の連携が少ないと常々思っていた。このような総合学習を取り入れることは、学校のまとまりを形成する上でも有効なのではないかと感じた。生徒指導で教員がまとまるより、ずっと有意義だと思うし、教師も生徒とともに学ぶという姿勢は、これこそ教育のあるべき姿なのではないか。
■本来、このような見方、考え方は家庭で培われるべきことであると思うのだが、総合学習の登場は家庭の役割が学校に期待されるようになってきた世の中の流れを受けて、起こるべくして起こったことのように思う。
■総合学習
脱教科:もっとフランクに生徒と向き合う教師の開          かれた心を持つことの必要性。
脱教室:地域社会に教師になりうる社会人がたくさんいることを気づくことの大切さ。
脱偏差値:評価とは?を真剣に考え直し、人間の能力の開発に必要な手段の発展
(この場合、総合学習かな?)の重要性。
そして最後に
脱帽:名古屋大学教育学部附属高校に対して
■総合学習の具体的取り組みをたたき台にメリット・デメリットを明確にできたことを学んだ。総合学習への期待が大きいだけにうまく育てていけたらと思った。
■本校では来年度から、理数科2年生に課題研究(1単位)という講座ができその評価、展開を今回、総合学習をされている具体例の中から、多くのことが学べて良かった。
■討論のやり方、進め方も勉強になった。
■討論が活発でよかった。


第9回勉強会報告「現代社会の課題を考える生物の授業実践」勉強会の流れ

オリエンテーション、アイスブレーキング

(15:00〜15:20)

 まず、第9回勉強会のねらいを説明し、名古屋大学教育学部附属高校の槙本直子先生に発表をしていただくこと、その後グループに分かれて話し合いをすること、話し合ったことや思いついたことは積極的に紙に書く方法を取ることなど、大まかな流れをお知らせしました。そして、コメントシート(報告書に載せてみたい提案などを書く欄と、報告書には載せないけれども勉強会の間に気づいたこと、気になったことなどを書く欄からなるA4サイズの紙)を一人一枚ずつ配布しました。コメントシートは勉強会終了後、回収しました。

 また、生命倫理研究室から当日参加した6人の学生の紹介がメイサーからあり、浅田は卒業後の留学のために次回からはネットワークの勉強会に参加できないこと、ネットワークの事務的な仕事は、今回の勉強会に参加している生命倫理研究室の学生の何人かが引き継ぐという説明がありました。

 その後、参加者全員で、2人1組となり、自己紹介をしました。この自己紹介では、一方が自己紹介をし、一方は聞き、時間を区切って行いました。その後、2組ずつの4人のグループを作り、パートナーを他の人たちに紹介する他己紹介をしました。このときできた4人のグループを、この勉強会で話し合いをするグループとしました。

槙本先生の実践報告

現代社会の課題を考える生物の授業実践

(15:20〜16:15)

●新教育課程について●

 まず、槙本先生は、平成6年度から実施されている高校新教育課程の説明及びその問題点の指摘をされました。それによると、普通科高等学校での理科の新教育課程の編成を見てみると、受験のために生物檻を取るところが多いが、しかし生物蘗は、生徒達に興味関心を持たせるような配慮がなされており、「人の生物学」として人間生活に密接に結びついているにもかかわらず、受験に不向きという理由で取り上げる高校は職業科などにに限られており、生物も入試が限られてしまうということで受講者が少なくなっているという現状があるということです。ここで問題となってくることとして、現代社会において非常に大きな問題となっているバイオテクノロジーやエイズ、臓器移植といった内容は主に生物に含まれていると指摘されました。そのために、ほとんどの生徒はこの問題についての基礎知識を学ぶ機会を失ってしまい、又、カリキュラム上、受験で考えると生物が取りにくいことも述べられました。

●生物 IAでの実践例●

 次に槙本先生の高校で行われている生物蘗の実践例が紹介されました。槙本先生の高校では高校1年生全員が履修することになっており、そこでヒトに焦点を当て生命に対する興味関心を育てながら、生命倫理教育を実践されている、そういった具体的なお話をうかがいました。生物蘗を4つの単元に絞り、その授業を構成されるにあたっては、系統的な学習に重点を置かれて授業を構成しているそうです。これは、生徒達の考えや興味関心などは、新聞などのマスコミに左右されやすく、興味関心だけに頼っていても駄目だからだそうです。例えば、薬害エイズの報道によって生徒の興味関心はエイズに向かい、昨年の京都会議の報道によって興味関心は環境問題に向いてしまう、というようにマスコミの情報によって生徒達は左右されてしまうことを指摘されました。それゆえ、生徒の興味関心にだけ頼っていても駄目であり、マスコミに踊らされないきちんとした科学的知識を与えなければならないと述べられました。そして、その基礎的知識を大切にしながら、そのうえで、これらの問題について考えさせなければならないと指摘されました。さらに、系統学習の重要性も指摘され、一つのテーマには生物檻、の範囲も適宜混ぜられ、できるだけ深く追求していくようにしていることも述べられました。

 授業で扱われている具体的な教材として、新聞記事やNHKスペシャルなどの ビデオ教材、生物図説などをあげられましたが、ユニークだったのは、槙本先生が 作製されている「生物かわらばん」というプリント教材でした。このプリント教材は 、前回の復習や今日の内容の要約などで構成されており、授業で取り上げられた内容から派生するするトピックスやエッセイ、生命倫理的な問題などを、絵を交えながらわかりやすく紹介しているものでした。又、文章は手書きで書かれており、絵はブルーバックスから引用されているとのお話でした。ビデオ教材で例として挙げられ たのは、NHKスペシャルで、内容は「人体(生命誕生)」でした。ビデオ教材を取り扱う際において注意されていることは、50分授業だけれど、途中で口を挟まずにそのまま50分見続けさせ、生徒達にきちんと考えさせることだそうです。そして、ビデオを見せた後で、生徒達にはそのビデオに関しての感想やコメントを含むレポートを提出させているそうです。又、他に、生命倫理を授業で扱う際に、ある程度の指針・方向性を示してあげないと、生徒達は興味関心を示してくれないといったことも述べられました。さらに、生物の教師は実験好きな場合が多く、実験の教材開発に力を注ぐことが多いけれども、実験によって必ずしも生徒達は興味・関心を抱くわけではなく、又、必ずしも理解が深まるわけではないことも指摘されました。

●質疑応答●

 発表の後、様々な質問がありました。まずビデオ教材についてですが、NHKスペシャルだけではなく、万物創世記や動物奇想天外などは扱われないのですかという質問 があり、コマーシャルが混ざるので扱っていないと述べられました。しかし、話 題として生徒から番組の内容についてあがってくることもあるとのことでした。また、 色盲に関して人権的問題を含んでいるがどう扱っていますかという質問には、その差別をきちんと示して、その差別的な考えは誤っているのだということをきちんと示すことが大切なのであって、扱わずに隠してしまう方が危険であると述べられました。クローンやアポトーシスなど高度な先端的知識を取り上げるときに 、生徒達は理解できるのかという質問には、レポートなどで質問されたときには 答えるようにしているが、基本的には理解しているようですと答えられてました。ま た、倫理的な問題を扱う際にはどうしていますかという質問に関しては、生徒達は他 の生徒の意見を聞きたがっており、その発表を行わせたり、各班ごとにその問題について議論させていると述べられました。又、生物と倫理の連携に関する質問では、総合学習についてあげられ、学年教員におけるチームティーチングの重要性を指摘されました。

(報告者:岡武志)

休憩(16:15〜16:20)

グループに分かれての話し合い

(16:20〜16:50)

 アイスブレーキングのときにできた4人1組のグループに分かれ、話し合いをしました。話し合いのテーマとして、槙本先生の実践報告をもとに、生命倫理教育ネットワークとして生命倫理教育について具体的に何ができるかを考えてみることを提案しました。まず、ひとりひとりが、ポストイットにそれぞれの考えを書き込みました。そして、1グループに1枚ずつ用意された模造紙に、ポストイットを張り付けながら、それぞれの関連性を探り問題点を明らかにしていく、という形で話し合いを進めました。気づいたこと、話し合ったことは、随時、模造紙にマジックで書き込むようにしました。

全体でのわかちあい(16:50〜17:10)

 ポストイットを張り付け、意見を書き込んだ模造紙を囲みながら、各グループで話し合ったことを全員に紹介しました。どのグループでもかなり具体的な意見が出され、また、参加者は生命倫理教育についてと、生命倫理そのものについて、どちらも学びたいと考えていることがわかりました。出来上がった模造紙は、12頁〜17頁のようになりました。

グループでのふりかえり(17:10〜17:30)

 もう一度、話し合いのグループに戻り、他のグループの意見をふまえながら、グループ内のでの話し合いをふりかえりました。このときグループ間でまとめられた意見は、「参加者からのコメント」に掲載しています。

ネットワーク活動報告書の出版について

(17:30〜17:40)

 ネットワーク活動報告書の出版について、名古屋大学教育学部附属高校の田中先生からお知らせをいただきました。詳しくは、21頁をご覧ください。

まとめ、事務的な連絡(17:45〜18:00)

 次回勉強会を、ネットワークとしてプロジェクトを進めるための話し合いの場にしてみてはどうかと、メイサー、浅田から提案しました。次々回勉強会以降、これまで通り発表者を立てそれについて話し合うという形に戻ればよいと判断しての提案でしたが、これまでの形を崩すべきではないという意見とネットワークとして何か行うためには話し合う場も必要だという意見のどちらも出、残念ながら時間の関係上、全員で納得のできる結論を得ることはできませんでした。次回の勉強会については、18頁と23頁をご覧ください。


参加者からのコメント

「コメントシート」から

■教科を超えて話しをすることにより、未知の視野を開くことが できてきたように感じるが、浅田さんの修士論文にもあるように、「思考の発展」というものは成し遂げら得てこなかったと思う。好奇心から参加した 自分には、当初目的というものが定かではなかったが、だんだんと目的は何か、ということを考えるようになってきた。参加者の経験を発表していただくことは、よい勉強になるし、これからの自分の授業へのヒントにもなり、 とてもありがたい。しかし、それだけを続けていくことには疑問を感じる。 思考の発展というものも一つの目的として考えられる。もちろん容易に達成できるものではないのだが、そういったものをターゲットにするという 視野はあるのだろうか。(勉強会のなかで)あるとすればどうすればいいのか。  勉強会は規模によってよりよい開催形態というものが変っていくものだと思う。確かにより多くの方に参加してもらって、生命倫理について考えていく教育的素地が必要だが、参加者が今より増加していった場合、勉強会も 形を変える必要がでてくるかもしれない。また、現在くらいの参加人数の場合、 いずれ、すぐに発表しつくしてしまい、マンネリ化がおこるのではないか。 そうなった場合、発表は、新参加者に対しての「生命倫理の授業とは」という 宣伝としてだけの価値しか(極端だが)持たなくなるかもしれない。それで いいのか。自分としては、失敗するかもしれないけれども新しいことを模索 していきたい。組織が大きくなればなるほど、そういった冒険はしにくくなる かもしれないが。

■生命倫理か生命倫理教育か、という議論には両方必要であると答えたい。 先生方は、教育の手段について学びたいという方が多いように感じたが、 教育というのは、イメージとしてではあるが、ともに風をきって、思考の 時空を駆けていくようなものであると思うので、自分自身の生命倫理という 学問も深めていきたいと思っている。たとえ、それを生徒の前で全面に出さ なくとも、教育にいかされてくると思う。

 いろいろ意見を書いたが、会の運営というのは大変であると聞いている。 維持するのがやっとである、という場合も多いとか。そういった意味では 継続していくことだけ意味がある、のかもしれない。   
■一度、「生命倫理学」の講義を受けたい。森岡正博
氏などを講師に。
■筑波大生3年のときに、人体系統解剖を経験しているので、夏休みなどに先生方が経験できるようにしたらどうか。同様の思いつきを集めて、紹介。それぞれのプロジェクトごとに担当を分担する等。
■新年度の年間予定をニュースレターに載せたい。
■D. メイサー編、高校「生命倫理」のtextbook の作成、共同執筆。実現はなかなか困難であるかもしれない。しかし、千里の道も一歩から。
グループシートから
生命倫理教育ネットワークとして今後、どのようなプロジェクトを進めていきたいと思いますか?
■研究会
■生命倫理そのものの研究、学習
■地域別研究会
■見学会
■模擬、公開授業、討論
■公開講座の開催
■授業案作成(テーマ毎)
■同じテーマで各学校での実践とその報告(年間テーマの設定)
■ビデオで授業を撮り、討論
■データベース作り(本、ビデオ教材など)
■ネットワークの拡大
マスコミ、インターネット、他の倫理研究会とのつながり、学会などでの発表
■各分野の交流(授業、教材、研究者、現場、海外も含む実践例)


こういったプロジェクトを進めるためには、具体的にどのような準備が必要でしょうか?
■核となる事務局(事務連絡と広報)
■テーマづくり
■他教科へのはたらきかけ
■パンフレットの作成(会員の高校から)
■全国公民科、倫理研、生物研などでの発表、紹介
■参加者名簿、連絡先、メーリングリスト


メンバーがネットワークに期待しているもの 浅田由紀子

 私の修士論文では、生命倫理教育ネットワークの活動を、参加者が勉強会で書き残したコメント、昨年秋にネットワークメンバーを対象に実施したアンケート調査をもとに分析しました。2ヶ月に一度開いてきた勉強会がネットワークメンバーにどのような変化をもたらしたのかについての詳しい分析は、田中先生がご担当されているネットワークの活動報告書に譲りたいと思いますが、ここでは、メンバーがネットワークに期待しているものについて、アンケート調査から得た結果を紹介したいと思います。

 まず、アンケート調査は、調査を実施した1997年9月の時点でメンバーとして名を連ねていた47名全員に送付しました。42名から回答を得、内1名からは、アンケートの回答と勉強会で書き残したコメントを分析のために使用することに同意を得られなかったので、最終的に41名を対象としました。41名のメンバーは全国14都道府県から参加しており、うち、高校の先生は88%を占めています。66%のメンバーは、勉強会に1度は参加したことがあり、勉強会に参加するかしないかを決定しているのは、居住地だとわかりました。
 勉強会に参加したことのあるメンバーが、ネットワークに参加する前に期待していたものとして、最も多かった回答は、「授業実践」と「同じ志を持つ人と知り合いつながりを持つこと」でした。また、ネットワークに参加して最も良かったこととして、最も多かった回答は、「同じ志を持つ人と知り合いつながりを持てたこと」であり、次に、「励まされたこと」と「様々な分野のこと、様々な分野の人とを知れたこと」でした。一方、勉強会に一度も参加したことのないメンバーが、ネットワークに参加する前に期待していたものとして、最も多かった回答は、「情報を得ること」と「同じ志を持つ人と知り合いつながりを持つこと」で、この結果から、ネットワークに参加する以前に期待していたものとしては、その後、勉強会に足を運ぼうと運ぶまいと、技術的支援と精神的支援の両方だったことがわかりました。しかしながら、勉強会に一度も参加したことのないメンバーが、ネットワークに参加して最も良かったこととして挙げた回答のうち最も多かったものは、「情報を得られたこと」で、次に「授業実践」「ニュースレター」「つながりを持てたこと」でした。勉強会に参加したことのあるメンバーの回答との比較から、勉強会は、精神的な支援を多く与えたということができると思います。

 今後、ネットワークに期待するものとして最も多かった回答は、勉強会に参加したことのあるメンバーでは、「授業実践」で、次に「つながりを持つこと」、勉強会に参加したことのないメンバーでは、「つながりを持つこと」と「ネットワークの拡大、発展」でした。この回答は、勉強会に参加したことのあるメンバーは、これまで築いたつながりを保ち広げつつ、具体的な授業実践を考えていきたいと期待していることを示し、また、勉強会に参加したことのないメンバーは、ネットワークメンバーと知り合っていくためにも、ネットワークが拡大、発展し、勉強会が関東以外でも開かれることを期待していることを示していると言えます。          

 このような結果から、ネットワークが今後、これまでの「肩肘を張らずに話ができる雰囲気」を保ちながら、メンバーを増やしつつ、授業実践などより具体的な課題を扱っていくことが、メンバーから期待されていると言えるのではないでしょうか。次々回以降、これまでの発表者を一人立て、発表後話し合いをするという形に戻ることを条件に、次回勉強会で、一度、今後ネットワークで扱っていける具体的な課題について話し合うことは、ネットワークの今後にとって望ましい形だと思います。


生命倫理教育ネットワークの今後について メイサー、ダリル

 先日、第9回目の勉強会を開くことができ、槙本先生には、大変興味深いご発表をしていただきました。勉強会も9回を数えた今、より実践的な方向へ向かってゆくことが望ましいように思われます。浅田が紹介しているように、昨年秋にネットワークのメンバーを対象に行った調査では、将来に対する期待について、授業実践をより多く取り入れていきたいという意見が最も多く見られました。今、ネットワークには、お互いに自由に意見を交換しあい、気持ちを共有することのできるよい雰囲気があります。この雰囲気を保ちつつ、生命倫理教育をより実践に基づいた形で進めていきたいというメンバーの願いにも答えていくべきだと感じています。

 このような理由から、5月16日の第10回勉強会では、何かしらの具体的な教育手法を提案したいと考えているメンバーの方々に、ひとり10〜15分ほどで簡単に説明をしてもらえればと思っています。そして、そこで出された考えをもとに、研究プロジェクトを進めることができればと思います。この研究プロジェクトは、個人でも、グループでも、あるいは、私や私の学生と組んでも構いません。これまでのところ、佐藤ひな子先生と細田真奈美先生が、この意見に賛成してくれていますが、より多くのメンバーの方からご賛同いただければと期待しています。研究プロジェクトにご関心をお持ちの方は、今後の計画を早い時期に立てていけるよう、次回勉強会の前に、私たちにご連絡ください。

 第11回勉強会は、三浦俊二先生にご発表いただき、これまでどおり、三浦先生のご発表を深める形で話し合いを行えればと考えています。日程としては、6月20日、あるいは27日あたりを考えていますが、また、次回勉強会で皆さんと日程を決められればと思います。これから年間を通じて、折に触れて研究プロジェクトの進行状況の報告を含めながら、基本的にこれまでの勉強会のやり方を継続していければと思います。研究プロジェクトが実際に始まれば、研究プロジェクトに関わる人たちが勉強会とは別に集まることもあるでしょう。

 さて、教育手法の例として、私がやってみたいことを簡単に紹介させていただきます。まず、3〜5つのトピックスを選び、一人の先生、または私の学生のうちの一人が(あるいは、先生と学生が一緒に)、15〜30分の授業を3〜4週間ごとに行います。最初の授業を行う前に(そのトピックスがまったく取り上げられていない状態で)、生徒を対象に自由回答形式の15分程度のアンケート調査を行います。そして、アンケート調査の後、例えば、「私たちは自分の車を使うべきか?バス、あるいは自転車を使うべきか?」「くじらを食べるべきか?」「エイズ検査を学校でするべきか?」といったトピックスについて話し合います。

 次の授業では、まず初めに、最初の授業と同じトピックスについて問うアンケート調査を行います。このとき得られた自由回答を第1回目の授業の初めに得られたものと比較します。そして、2回目の授業の後半部分では、1回目の授業のトピックスに関連はあるけれども新しいトピックスを扱います。第3回目以降も同様に、3回目の授業の最初には2回目の授業で扱ったトピックスについてアンケート調査を行い、後半部分でまた新しいトピックスを導入します。一連のトピックスを授業で扱ったあと、お互いに関連し合うトピックスについて生徒がどのような理由づけを行っているのか検討します。例えば、生徒は他の人の意見を尊重しているのか、生命の尊厳をもとに考えているのか、人間中心の考え方か、自己中心的考え方か、生物中心の考え方か、国際的な考え方か等について検討します。また、ある先生が、他の先生の学校を訪れて、自分の学校とは違う生徒を対象に同じ教育方法を試してみることも、興味深いかもしれません。

 もしできるなら、ビデオや感情を揺さぶるような写真、ある話題を一面的にしか取り上げていない例、教科書などから、2、3の異なる教材を選び、それらを比較することによって、生徒がどのように学んでいくのかを検討することもできます。実際のところ、何をもってその教え方が成功したとするのか、その尺度はどのようなものなのかという点はまだ明らかではありません。皆さんが、これまでのニュースレターにもう一度目を通し、何かしらのヒントが得られればと思います。また、生命倫理教育は、私たちがそう願っていても、長期的な姿勢に影響を与えることはないのかもしれません。研究をしてみなければ、生命倫理教育の様々な手法をどうやって比較するのか、どうやって改善していくのかについて手がかりを得ることはできません。

 皆さんのお考えを聞けること、そして、一緒に研究を進めていけることを楽しみにしています。今後、研究を進める上でも、私たちがこれまでに築き上げてきた肩肘のはらないよい雰囲気をなくさないようにしましょう。

 第9回勉強会後の夕食の席で何人かの先生方と相談したもうひとつの提案は、長いお休みの間(例えば8月5〜7日)に筑波大学で2〜3日の合宿勉強会のようなものを開催してみてはどうかというものです。この合宿勉強会に参加をご希望の方は、文書にてお知らせください。また、8月1〜14日の間でどの日が一番都合がいいかもお知らせください。配偶者の方をお連れしたい方には、ツインルームもご用意できるかと思います。メンバーの方のご意見を伺ってから、詳細について決められればと思います。

 最後に、今年11月4〜7日に東京で開催される第4回世界生命倫理会議のサテライト会議、第4回つくば国際生命倫理円卓会議の一環として、11月1日に筑波大学にて生命倫理教育に関する国際シンポジウムが開かれることをお知らせしたいと思います。現時点では、シンポジウムは英語のみで行われる予定ですが、東京で行われる会議では同時通訳が用意できる可能性もあります。言葉の問題はありますが、11月1日のシンポジウムを、世界各国で生命倫理を築いてきた海外の研究者と知り合いになる機会にできればと期待しています。

 おそらく、そう遠くない将来、ネットワークとして生命倫理教育に関して、海外へのスタデイー・ツアーや交流研修を企画することができるでしょう。こういった点も考慮して、ぜひ、この秋の会議に参加すること、そして、論文を発表することを前向きに考えていただければと思います。論文の発表は、研究グループとして行うことも可能です。私は、つくばで開かれる国際生命倫理円卓会議では司会者を、東京で開かれる世界生命倫理会議では副大会長を務めさせていただくことになっています。それゆえ、ネットワークのメンバーの皆さんのご参加についてもう少し後でご意見を伺うこともできますが、もし早めにぜひ、という声があがれば、大変うれしく思います。つくば国際生命倫理円卓会議は形式ばらない集まりで、例年、楽しい雰囲気のもと会議を開いていますので、どうかお気楽にご参加ください。英語の善し悪しはそれほど問題ではありません。海外の参加者の方は、皆さんのお話を一生懸命聞いてくれるはずです。それでも、やはり話すことには抵抗がある場合は、ポスターセッションでのご発表という形もあります。


新しい学生から

 第9回勉強会には、生命倫理研究室から6人の学生が参加しました。このうち、雨宮、岡、小松、鶴田、日暮の大学院1年生の5人は生命倫理教育に興味を持っています。今後、ネットワークに関わり、事務的な仕事も引き受けていくことになると思いますので、ここでそれぞれの自己紹介をさせていただきたいと思います。 

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 私のことを知らない人がほとんどだと思いますので、まず自己紹介からはじめよう と思います。私の名前は雨宮浩二といいます。筑波大学大学院修士課程環境科学科の1年生(4月からは2年生)です。メイサー先生の研究室(生命倫理学)に所属してい ますが、環境教育に興味があります。学部時代は動物生態学を専攻しており、卒業論文も動物の生態についてのものでした。しかし大学院進学を機に、教員志望というこ ともあり、メイサー先生のところに研究室を変更しました。そのためか、環境教育に ついてはまだ駆け出しであり、私自身の勉強不足も重なってほとんど素人に近い状態です。

 私自身が教員志望ですので、生命倫理教育や環境教育についてだけでなく、現場の先生の生の声を聞ける良い機会だと思い、このネットワークに参加させてもらうこと にしました。大きな力にはなれないかもしれませんが、がんばってサポートしていきますので、よろしくお願いいたします。

 環境教育に興味のある方、または実践されている方は、是非メールを送って現 場の声を聞かせて下さい。 雨宮 浩二 amemiya@sakura.cc.tsukuba.ac.jp

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 初めまして。今年1年間生命倫理ネットワークに参加させていただく岡武志と申します。出身は三重県で、趣味は水泳、映画鑑賞、モトクロスバイクなどです。現在、 筑波大学教育修士理科コース1年に在籍しております。大学時代には、筑波大学第二 学群生物学類に所属しておりました。専門は分子生物学で、生物学、特に分子生物学 についてひと通り学び、卒業研究ではエイズウイルスの増殖を押さえる基礎研究のよ うなものを大腸菌レベルで扱っていました。メイサー先生にお世話になり始めたのは去年の12月あたりからです。メイサー研に 所属しようと考えたのは、将来、私は高等学校理科の教師になることをめざしており、 理科教育、特に生物の中で生命倫理について扱えていけたらと考えたからです。そこで修士論文で生命倫理教育について扱っていこうと考え、メイサー研の門をたたいたわけです。

 先日、教育修士の方で修論の構想発表会があり、それに向けてテーマや目的、研究方法などを絞りました。テーマは、「高等学校における生命倫理教育に関する教材開 発」です。又、修論作製にあたりまして、ネットワークに参加していらっしゃる現職の教員の方々には、現場の貴重なご意見などをいただいていきたいと考えて おります。

 まだまだ生命倫理学については勉強不足ですが、皆さんと一緒に生命倫理教育 の今後の在り方について勉強していけたらと考えております。皆さんが立ちあげられ たこのネットワークがより発展するようがんばっていきましょう。 よろしくお願いします。 岡 武志

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 筑波大学教育研究科の鶴田一司です。よろしくおねがいします。

 研究テーマは、「生物教育における生命の尊厳の扱いについて」として、高校生物の食物連鎖を中心にして、高校生は「いのち」をどのようにとらえているか調査していきたいと思っています。このネットワークでは、現場の先生方の生の声や考えにふれ、自分の研究のみではなく、これからのさまざまな事柄にいかしていきたいと思っています。私自身うまくやっていけるかどうか、わかりませんが、メーサー先生をはじめ、ネットワークの先生方や、研究室の友達と、みんなで活動を盛り上げていけるようにがんばっていきたいと思います。                鶴田一司

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 私は、筑波大学大学院バイオシステム研究科1年(来年度2年)の小松 宏充と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 大学時代は、人間生物学を専攻しておりまして、研究テーマは、「心拍変動解析法を用いた自立神経機能評価法に関する研究」という、なんとも、ややこしそうなものでありました。内容を簡単にご説明いたしますと、交代勤務などの昼夜逆転生活が、血圧、自立神経系の日内リズム(体の調子)変動に、いかなる影響を及ぼすのかを調べようというものです。血圧、心拍、そして交感・副交感神経(これは心拍数から計算して出された指標を使って、表されています)を測定することのできる携帯型自動血圧心拍計を用いて、実際に、私自身が10日間、病院の方に宿泊して、昼夜逆転生活を行い、初日、中日、最終日に、24時間その装置をつけたまま生活して、データを収集するという、かなりハードな実験でありました。また、それと平行して、同じく初日、中日、最終日に、胃の中のPH値を測定する管状の測定器(太さは2〜3mm程度)を鼻からいれて、24時間生活するという実験も行いました。

 詳しいデータは省略いたしますが、結果、昼に寝て、夜に起きているという生活は体にあまり良くないのではないか、という結論に至りました。

 そういった過酷な実験を乗り越え、現在、大学院では、バイオテクノロジーについて勉強しておりまして、特に、一般の人々が、そういったものについて、どのように感じているのかという事について研究いたしております。具体的には、小・中学生・高校生を対象にして、バイオテクノロジーへの期待や不安といったものを調査しております。小・中学生・高校生を対象にいたしましたのは、未来においては、彼・彼女達が社会の担い手であるからです。

 ネットワークには先日が、初参加でありましたが、多くの先生方のさまざまなご意見を聞き、自分自身も勉強していくことをこれからも楽しみになりました。

 まとまりのない話ではありましたが、私の自己紹介とさせていただきます。これからも、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。 小松 宏充

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 私は、現在、筑波大学大学院環境科学研究科1次に所属しています。浅田さんの1年後輩に当たります。学部時代は、東海大学教養学部生活学科で、環境と資源の問題について学びました。卒業研究では,光触媒(半導体の一種)を用いた殺菌法の開発を行っていました。これは、一つには太陽エネルギーの有効利用、いま一つには、上下水処理で用いられている塩素殺菌に代わる方法の開拓をねらったものでした。こうした新しい環境関連技術は、学会では、化石資源に代わる代替エネルギー獲得手段として宣伝され、多額の研究費と獲得しています。

 しかし、例えば半導体の場合、半導体の製造時に必要とされるエネルギーは無視され、製品の寿命は過大評価されがちです。私は、科学技術を完全に否定するつもりはありませんが、新しい技術の開発のみで問題を解決しようという現代社会の潮流には、ひどく疑問を感じるようになりました。この様な疑問から、メイサー先生の元で、環境倫理学(生命倫理)を学ぶこととなりました。修士論文のテーマは、人々の環境問題に対する認識と、行動について取り扱う予定です。車社会を事例として認識と行動のギャップについて検証して行くつもりです。

 私は、このネットワークに参加するまでは、特に、環境教育や生命倫理教育に興味を持ったこともなく、何も知識がありませんでした。しかし、修士課程での私の研究は、環境問題に関する知識とその知識が与える行動の変化について扱うものであり、この意味で環境教育との関わりは、きわめて大きいといえます。私は、まだ、この分野の知識は浅く、頼りない感を与えるかも知れませんが、今後は環境倫理学、倫理教育、共に見聞を深めて行こうと思っております。ネットワークにも頻繁に参加して行く予定なので、その際は、よろしくお願いします.        日暮 久敬


「編集室から」つづき(1頁から)

立後の1年ほどの期間は、特に楽しく勉強をさせてもらいました。ネットワークの参加者の方々の熱意と辛抱強さと暖かい励ましに、改めて感謝の気持ちを表したいと思います。このニュースレターを書いている3月14日の時点で、私の行き先はまだ決まっていません。行き先が決まり次第、ニュースレターに報告をさせていただければと思っています。博士課程では、生命倫理とは別の興味をさらに広く取り入れた形で、南北問題の視点を取り入れた生命倫理について研究したいと考えています。欧米の大学院での生命倫理教育がどのようなものなのかといった点についても、今度は、教育を受ける側として、折に触れてニュースレター紙面で報告させていただければと思います。短い期間ではありましたが、皆さんと一緒に学ぶことができ、またネットワークの設立に関わることができ、とても幸運だったと感じています。このネットワークでの経験は、生命倫理教育に直接かかわる研究でなくても、私の今後の研究の原動力となると確信しています。このようなすばらしい機会を与えていただき、どうもありがとうございました。生命倫理、生命倫理教育を通じて、より多くの人や生き物が幸せに暮らせる社会を目指して、これからもお互いにがんばりましょう。
浅田由紀子


生命倫理教育ネットワーク活動報告書

の出版について

『高校における生命倫理教育の実践

     ・・・総合学習への模索・・・』(仮題)

 3月の定例研究会で7人の先生方の実践の発表が終わりました。これまでの生命倫理教育ネットワークの活動の紹介・宣伝も含めて、出版を計画しました。

 自分を含めるのは恐縮ですが、7人の発表は、高校における生命倫理教育の実践として創造性があり、このまま埋もれさせてしまうのは惜しいと思います。全国に発信して生命倫理教育の交流と発展を計る一助にしたいと思います。

 また最近の例会では、生命倫理教育は生物と倫理の教師の専有物ではなく、他教科とくに保健や家庭科の先生の協力も必要だと議論されています。これは、教育課程審議会などが高校における総合的学習の2003年実施を打ち出している方向と重なります。高校における総合学習の核として生命尊重の教育=生命倫理教育を位置づけ、その実践を積み重ねモデルを示していくことは意義のあることだと思います。

 ご協力したいというお申し出もいただいておりますが、今回は定例研究会での発表をベースとしたいと思います。今年のはじめからすでに動き出しておりますので、次回にご協力をお願いしたいと思います。以下は予定している内容です。発行は9月はじめの予定です。        (出版編集代表 田中 裕巳)

第1部 総論
 第1章 世界の生命倫理教育の動向
            ・・・中等教育を中心に
     (メイサー、ダリル 筑波大学生物科学系)
 第2章 高校での生命倫理教育ネットワークについて
        (浅田由紀子とメイサー、ダリル 筑波大学生物科学系)
 第3章 総合学習「生命について」の授業から
        ・・・高校における総合学習の課題
         (田中裕巳 名古屋大学付属高校)

第2部 社会科・公民科の実践から
 第1章 公民「倫理」「現代社会」で「いのち」
      を扱う-高等学校における生命倫理教育-
          (大谷いづみ 都立国分寺高校)
 第2章 病の人間学-病をめぐる生命倫理
        (小泉博明 私立麹町学園女子高校)
 第3章 生命倫理教育と環境倫理教育
        (井上兼生 埼玉県立大宮中央高校)

第3部 理科・生物科の実践から
 第1章 『解剖』といのちの重さ-牛の目の解剖-
           (鈴木宏治 都立南葛飾高校)
 第2章 生物学と生命観-脳死の授業から
          (白石直樹 都立足立新田高校)
 第3章 現代社会の課題を考える 
         生物1Aの授業実践
         (槙本直子 名古屋大学付属高校)


イベント情報

このコーナーでは、セミナー、勉強会、会議などをお知らせします。みなさんからの情報をお待ちしています。

生命倫理教育ネットワークつくば夏合宿●

1998年8月9-10日

筑波大学にて

(宿泊は筑波大学ゲストハウスとなります)

 夏休み期間中、筑波大学で2〜3日の合宿勉強会のようなものを開催してみてはどうかという提案が出ています。学期中は距離的にも勉強会になかなか参加できない方にぜひご参加いただきたいと思っています。実際、どのくらいの人数の方が参加を希望されているのか人数を把握するためにも、この合宿勉強会に参加をご希望の方は、文書にてお知らせください。また、8月1〜14日の間でどの日が一番都合がいいかもお知らせください。配偶者の方をお連れしたい方には、ツインルームもご用意できるかと思います。尚、筑波大学ゲストハウスは筑波大学内にあり、シングル一泊およそ2000円です。

安彦忠彦・名古屋大学教育学部附属中学・高校著

●「中高「総合的開発」のカリキュラム開発」●

明治図書


教材発掘

このコーナーでは、生命倫理教育の参考となる本や論文、テレビ番組、インターネット上のホームページなどを紹介します。

みなさんに紹介したいものを見つけたときには、ぜひこのコーナーにお知らせください。 

 この本では、名古屋大学教育学部附属学校が取り組んできた総合的な学習の、具体的な実践例が紹介されています。附属学校では、この総合的な学習について、平成7年度から3年間、文部省の研究開発学校として取り組んできました。その成果をまとめたのがこの本であり、この本に書かれているカリキュラムや実践例などは、中教審で出された「総合的な学習」の時間の具体的な実践例として、そのモデルになりうる性質のものです。「総合的な学習」の時間をどうしていけばよいかの参考となるでしょう。       (岡武志)


学校における生命倫理教育ネットワーク

第11回勉強会のお知らせ

<とき・ところ>

6月27日 15:00〜18:00
<発表者>
埼玉県立草加西高校 三浦俊二先生(社会)
第11回勉強会の詳細については、
次号ニュースレターにて改めてお知らせします。
学校における生命倫理教育ネットワーク
第10回勉強会のお知らせ


とき・ところ
5月16日(土)15:00〜18:00
東京都立日本橋高校にて
テーマ
研究プロジェクトの計画
<当日のスケジュール>
15:00〜15:30
オリエンテーション、アイスブレーキング
15:30〜16:30
メンバーからの具体的な教育手法の提案
(10〜15分/人)
16:30〜17:30
討論
17:30〜18:00
まとめ

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ぜひやってみたい研究プロジェクトをお持ち方は、
勉強会前にご連絡ください。
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<日本橋高校への最寄り駅>
営団地下鉄半蔵門線水天宮前駅
(2番出口より徒歩2分)
日比谷線・東西線茅場町駅
(4b出口より徒歩7分)
日比谷線・都営浅草線人形町駅
(A2出口より徒歩10分)

ご投稿、ご意見、情報提供をお待ちしています!

ニュースレター第5号への掲載希望記事の締切:5月15日
書式自由、字数制限特になし(4000字を越える場合は、事前にご相談ください)
できれば、電子メール Email < asianbioethics@yahoo.co.nz >.
あるいはフロッピーデイスク(マッキントッシュ/720 KB/1440 KB)でお送りください。
どんなに短くても、どんなテーマでも構いません。
皆さんのご発言を心待ちにしています!
生命倫理に関する教育研究グループ
岡武志 ダリル メイサー(責任者、筑波大学 助教授) 
〒305 茨城県つくば市 筑波大学 生物科学系
FAX: 0298-53-6614 / TEL: 0298-53-4662
Email < asianbioethics@yahoo.co.nz >.
学校における生命倫理教育ネットワーク
オーストラリア,日本,ニュージーランドの高校における生命倫理(日本語版)
Teaching materials in English/生命倫理教育の補助教材(日本語版)
To Eubios Ethics Institute Bioethics Resources